バイオ・ケミカル事業部
製造部医療原料製造課課長
髙松信一郎
高品質なコラーゲンとゼラチンで
未来の医療を支える。
命を救うコラーゲンとゼラチンの製造。
病気やケガなどによって損なわれたり、失われたりした臓器や組織を修復・再生する医療に、コラーゲンとゼラチンが活用されている。これらを製造しているのは、ニッピの富士工場(静岡県富士宮市)とテクノセンター(東京都足立区)。医療用のコラーゲンとゼラチンの特徴、製造工場にある設備と技術とは。
バイオ・ケミカル事業部が誕生するまで。
医療用のゼラチンやコラーゲン、細胞培養関連製品を製造してきたバイオ部門と、化学架橋塩化ビニルや電線被覆コンパウンド製品を製造してきたケミカル部門。両部門の強みを結集し、再生医療をはじめとする生命科学・化学分野での事業拡大と研究成果の事業化を図る専門組織として誕生したのが、バイオ・ケミカル事業部だ。研究・開発から製造、販売までを担い、社内では「社内ベンチャー」と位置付ける声もある。バイオ・ケミカル事業部の製造部医療原料製造課課長の髙松信一郎は、1988年にニッピに入社。同部の前身で注射薬の安定剤などの製造に携わっていたが、2001年、牛海綿状脳症(BSE)の発生時は前線で対応した。「ニッピの製品はほとんどコラーゲン(牛)を原料にしたものなので、不安でもあり大変でもありました」
日本で最初にBSEが発生したときは、農林水産省家畜精製試験所(現農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門(茨城県つくば市))へ研究員を派遣し、共同研究に取り組んだ。開発した動物用体外診断用医薬品は、国内で正規販売されている唯一のBSE検査キットである。
同部が「社内ベンチャー」と捉えられる所以は、こうした歴史の中で社会から求められるものに応え、課題の解決につながる製品を生み出してきた姿勢が根付いているからかもしれない。
60年前にトライした
医療応用に再び。
コラーゲンは私たちの骨や皮膚、血管、角膜などの組織を構成するタンパク質のひとつで、人体の総タンパク質の約30%を占める。「特に骨はカルシウムだけでできていると思われがちですが、カルシウムを取り除くと残りの大半がコラーゲンなんですよ」このコラーゲンの性質に着目したニッピは、60年以上前から医療応用に取り組んでいた。当時は周辺技術が追いつかず製品化には至らなかったものの、長い年月を経て、今、バイオ・ケミカル事業部の医療原料製造課が医療用のコラーゲンとゼラチンの製造を担っている。コラーゲンは、神経再生用のチューブ、人工骨などに使われ、ゼラチンは、注射薬の安定剤をはじめ、手術に応用可能なフィルムや組織再生用スポンジなどに活用されている。また、iPS細胞を使った再生医療にもニッピの製品が使われている。
水と空気を徹底管理した
製造環境。
医療用のコラーゲンとゼラチンの最大の特徴であり要となるのは、菌やエンドトキシン(菌の分解物で体の中に入ると発熱を引き起こす物質)がないことだ。それを実現するための製造環境が、富士工場とテクノセンターにある。ポイントは水と空気。使用する水は、理論上イオンがないというくらいまできれいにし、体内に注射できるレベルの水に。クリーンルーム内の最も清浄度の高いエリアは、移植手術ができるほどの空間だ。通常、30センチ立方の空間に100万〜1000万の塵が含まれるとされるが、ここでは100ほど。花粉も細菌もほぼ存在しない世界である。空気はゾーニングによって、常にクリーンなエリアから汚染エリアに向かうように流れを作り、人と物の動線は交わらないよう設計されている。スタッフは入室時に靴を履き替え、クリーンウエアを着用し、エアシャワーや粘着マットを通過するなど、細かなルールが徹底されている。
「同スペックの医療用のコラーゲンやゼラチンをつくる工場は世界にもいくつかありますが、キロ単位での生産に対応できる企業は多くありません。富士工場はテクノセンターの約10倍の製造能力があり、主力工場として稼働しています」
「必ず誰かの役に立つ」がモチベーション。
食品や化粧品で使われるようになり、今ではすっかり身近になったコラーゲンだが、かつてはマイナーなタンパク質で、研究ができる大学も多くなかった。「私は大学で畜産物化学を専攻していました。革に関する研究をしていたので当時からコラーゲンとは長い付き合いで、いわば長年のパートナーのような存在です。いろんな可能性を秘めていて、わくわくさせてくれる物性なんですよ。ニッピに入社してから医療分野に携わる縁をいただきました。大雑把な性格で、緻密さを求められる研究職には向いていなかったのですが、『モノをつくることに対してプライドを持て』と、師匠にずいぶん鍛えられましたね」と髙松は笑う。
患者さんと直接コミュニケーションをとることはないが、「人の命に関わる仕事をしている」「必ず誰かの役に立っている」という実感が、ルールや作法の多い仕事を続けるモチベーションになっている。
今、日本の医療メーカーは海外を視野に入れた取り組みを進めている。ニッピでも医療応用は注目のテーマ。髙松は工場のスケールアップに向けた準備を進めている。「営業のメンバーもがんばってくれていますからね。それに応えられる製造体制をつくっていきます」
髙松信一郎/バイオ・ケミカル事業部 製造部医療原料製造課課長。
大学で畜産物化学を学び、ニッピへ。

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