ゼラチンの物性

ゾル-ゲル変換

ゼラチンは温度変化によってゾル-ゲル変換を行います。冷却により部分的にコラーゲンヘリックス
(トリプルヘリックス)を回復し、コラーゲン構造とその会合体(結晶領域)を結節点とする強固なゲルを形成します。一方で加温によりゲルは溶解して均一溶液(ゾル)になります。ゾル-ゲル変換は可逆的な相転移現象です。

ゼリー強度

ニッピゼラチンの使用に際して、その水溶液を冷却して得られるゲルの硬さは非常に重要な物性で、このゲルの硬さを
通常ゼリー強度といいます。ゼリー強度はpH、濃度、温度および共存物質などの影響を受けて大きく変わります。
ゼリー強度はJIS法(JIS-K-6503(2001))に従い以下の方法で測定します。

① ゼラチンを濃度6⅔質量%に溶解した後、120mLを専用ゼリーカップに入れ、室温放冷後、ゴム栓をして10℃の
恒温槽で17時間冷却する。
② ①で固まったゼラチンの硬さをテクスチャーアナライザーで測定する。ゼリー強度は、直径12.7mm の平型プローブをゲルに4mm 侵入させる力(g)で表す。
                                                            

粘度

ゼラチン・コラーゲンペプチドの用途によっては、その水溶液が粘性を有することが重要になる場合があります。
これらの水溶液の粘度は、pH、濃度、温度および共存物質などの影響を受けて大きく変わります。
粘度はJIS法(JIS-K-6503(2001))に従い以下の方法で測定します。

①ゼラチンを濃度6⅔質量%に溶解した後、専用の恒温槽付ピペット形粘度計で一定量の溶液を60℃に保ちながら、
その落下時間を測定する。
②粘度計校正用標準液JS10 と50(JIS Z8809)で測定して求めた、粘度計恒数を代入した計算式を使って落下秒数を
粘度(mPa・s)に換算する。
                  

ゼラチンのAタイプとBタイプの違い

    ゼラチンは、酸処理ゼラチン(Aタイプ)とアルカリ処理ゼラチン(Bタイプ)に大別されます。酸処理ゼラチンと
    アルカリ処理ゼラチンの違いは、原料処理による違いにより発生します。大きな違いは等電点となります。
    ゼラチンなどのタンパク質分子では無機イオン等を吸着しているため、等電点で(+)と(-)の荷電量が
    等しくないことがあります。この場合、荷電量がちょうど釣り合って±0 になるpH を等電点といいます。
    酸処理ゼラチンの等電点はpH7~9、アルカリ処理ゼラチンの等電点はpH5付近です。
    アルカリ処理ゼラチンは等電点で溶液の粘度、濁度、浸透圧、起泡性などの物理的性質が特異な挙動を示しますが、
    酸処理ゼラチンは前者ほどはっきりしません。
               

ゼラチンの融点と凝固点

ゾルがゲルになるときの温度を凝固点、ゲルが溶けてゾルになるときの温度を融点といいますが、通常はゼラチン濃度10%の時の値で表示します。市販ゼラチンの凝固点は20 ~ 28℃で、同じゼラチンの融点はそれより約5℃高く
なります。また、魚ゼラチンの融点・凝固点は牛・豚由来ゼラチンに比べて低くなります。凝固点、融点は
ゼラチン水溶液の濃度、pH、共存物質などの影響によって変わります。
下記グラフはニッピゼラチンの融点の一例となります。

                       
 

ゼラチンのゲル化速度

ゼラチン溶液を冷却したときのゲル化速度は、一般的にゼラチン濃度が濃い方が速く、ゼリー強度が高いほど、
粘度が高いほど速くなります。また、ゲル化速度は溶液のpH によっても変化し、アルカリ処理ゼラチンでは等電点に
近い方が速くなります。
下記図は6⅔質量%のゼラチン溶液を50℃から20℃まで急速に冷却した時のゲル化時間とゼリー強度・粘度の関係を
振動式粘度計で測定した結果となります。

                       

      

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