所員による研究レポート

レポートNo.001 不溶性コラーゲン線維の可溶化について

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レポートNo. 不溶性コラーゲン線維の可溶化について
001

コラーゲンの可溶化

1960年に西原富雄博士によるコラーゲン抽出が成功するまで、コラーゲンは難溶性の蛋白質と考えられており、ゼラチンとして煮出す以外に有効な方法は無いと考えられていました。しかし、熱を加えた状態ではコラーゲンの構造は壊れてしまい、生体内にあるコラーゲンが本来もつ3本鎖の構造は失われてしまいます。西原博士は、蛋白質を可溶化するために蛋白質分解酵素を用いる、という斬新なアイディアを考えだし、本来の構造を保ったままのコラーゲンを溶けた状態で得ることに成功しました。コラーゲンは非常に特殊な蛋白質であり、コラーゲン分解酵素という特別な酵素以外の蛋白質分解酵素では分解されなかったのです。この新しいコラーゲン可溶化法は、1960年に特許出願した後、1963年に正式に特許として認められ、さらに米国の特許権も得るに至りました(文献1、2)。また、「コラーゲンに対する酵素の作用と不溶性コラーゲン線維の構造」という論文として発表されました(文献3)。

この最初のコラーゲン可溶化法の発明を皮切りに、ニッピ研究所では様々なコラーゲンの可溶化法が開発され、特に、藤井忠彦博士が発明したアルカリによる可溶化法(文献4、5)は、スキンケアクリーム(現:スキンケア ジェル NMバランス)製造にも応用されています。
           
また、コラーゲンの可溶化技術とコラーゲンの再線維化技術を駆使して、コラーゲンの医療用途への応用研究を進め、人工皮膚、外科手術用糸、人工透析膜などの開発を行いました。その技術は、当社コラーゲンケーシングや、研究用コラーゲン製品へと引き継がれています。
コラーゲンの特集 西原の論文も掲載
コラーゲンの特集誌
西原博士の論文も掲載
西原論文から引用 コラーゲン可溶化の模式図
西原博士の論文から引用
コラーゲン可溶化の模式図
コラーゲン分析に用いた超遠心機のローター部分
コラーゲン分析に用いた
超遠心機のローター部分
コラーゲンチューブを使った人工透析機 試作品
コラーゲンチューブを使った
人工透析機(試作品)
コラーゲン製の外科手術用糸 製品
コラーゲン製の外科手術用糸
コラーゲンを用いた人工皮膚 製品
コラーゲンを用いた人工皮膚
コラーゲン製の外科手術用糸 製品
コラーゲン製の外科手術用糸(針付)

関連レポート

文献1  国内特許 不溶性コラーゲン繊維の可溶化 西原富雄 (出願 1960年) 特願昭35-2392
文献2 米国特許 Method for colloidally dispersing collagen. Tomio Nishihara (出願 1961年) US patent No. 3121049
文献3 Nishihara T, Miyata T. The effects of proteases on the soluble and insoluble collagens and the structure of insoluble collagen fiber. Collagen Symposium vol.3, 66-93 (1962)
文献4 国内特許 不溶性コラーゲン繊維の可溶化法 藤井忠彦(出願 1971年)特公昭46-15033
文献5 Fujii T. The effect of amines added to an alkali-pretreatment on the solubilisation of collagen and on the properties of gelatin. Hoppe Seylers Z Physiol Chem. 350, 1257-1265 (1969)

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